オリジナル小説 アマガセ 番外編
「遠い記憶」
12
「タイメイの助けで何とかやっていますが、やはり大巫女は大変です。でも弱音を吐くわけにもいきません。彼やあの事件で犠牲になった人たちのためにも、一日も早く水晶宮を元通りにするのが私の責任ですから。ところで、ここに彼の父親が眠っていると聞きましたが……」
「ええ、あいつの隣に。あの後、全てが明らかになり、親父さんの名誉が回復されてここに移されたんだ。あいつもきっと満足しているだろう」
「そう……」
女はしばらく二人の墓に手を合わせていた。
「もう行かなくては。夕べの儀礼がありますから」
一陣の風が巻き起こり、彼女の姿を掻き消す。後には女が供えた花だけが残されていた。
オギは木の根元に腰を下ろし、現れるはずのない友人を待った。ここにこうして座っていれば、もう一度だけ会えるような気がしてならなかったのだ。
「まったく、お前は勝手だよ。幼馴染の俺を親友だと言っておきながら、何も話してくれなかったんだから。オヤジ殿から聞かされて、俺は何もかも知ったんだぞ」
オギの言葉に返事はない。
見上げると、夕日が雲を茜色に染めていた。Fin.
あとがき
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。オギの過去の話と言いつつ、ユゲが主人公の如く、オギよりも多く登場する話になってしましました。
「アマガセ」の番外編として、本編を書く前に書いてしまった代物なのですが、少しでもアマガセの雰囲気がわかって頂ければいいかなと思い、小説置き場に載せました。
小説なんて書いたことがないKeiの初めての作品を、再度手直ししたものなので、読みにくい所がありましたら、ごめんなさい。
こんなものでも楽しんで頂けたら幸いです。 (2008.3.27)
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