オリジナル小説 アマガセ 番外編

「遠い記憶」

今年もまた、オギはあの地へ友に会いに行った。

村を見渡せる丘の木には先客がいた。

 オギが近づくと、女は少し驚いたように振り返った。

「お久しぶりですね。オギさん」

 女は一目でオギのことがわかったらしい。

「本当にそうですね。あなたと会うのはあの時以来だ。よくここに来られるんですか?」

「ええ、あの人がいなくなってから十年経つのに、まだ忘れられないみたいで……」

 女は木の根元をみつめながら、

「……私、少し後悔しているんです。こうなることがわかっていたのに止められなかった」

 女はまだあの時のことを気にしているようだった。

 しかし、悲しみに似た後悔ならオギにもあった。

 なぜ、自分はあの時、無理にでもあいつを引き留めなかったのだろう。そして、あの時のことは十年経った今でも、鮮明にオギの脳裏に焼きついて、決して消えなかった。

 

 

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